【未経験者向け】特許事務所への転職方法まとめ｜求人の探し方から選考対策まで

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開発や設計などの技術職から特許事務所へ転職して弁理士としてのキャリアをスタートさせたいという方も多いのではないでしょうか？

初めての転職でしかも特許事務所という独特の業界への転職で不安を感じられる方もいると思います。

この記事では、知財未経験のメーカー開発職から特許事務所に転職して弁理士になった私の経験を基に特許事務所への転職のポイントについて解説していきます！

求人情報の探し方

特許事務所は職人的な世界であるため、入所する特許事務所、さらに言えば配属部署や指導者によってキャリアが大きく左右されます。したがって、入所する特許事務所との相性が非常に重要となってきます。

特許事務所やオフィスのトップが誰であるかによって職場の雰囲気は大きく変わり、ホワイトな事務所もあれば、独裁者が支配するブラックな事務所もあります。

私のように事務所や指導者が合わなくて短期離職という話もよく聞くので、特許事務所選びには慎重になるべきです。

私の場合はメーカー開発者として特許出願したときに担当してくれ、さらに今住んでいる地域にブランチがあるという理由で応募する特許事務所を選びました。

特許事務所のホームページから直接応募

各特許事務所のホームページの採用情報から直接応募する方法です。

特許事務所は大手メーカーと比較すると遥かに規模が小さく採用コストにシビアです。直接応募で採用すると転職仲介企業に報酬を支払う必要がないので、事務所としても直接応募の方がありがたいという声をちらほら聞きます。

転職者側にもメリットがあり、採用コストの面から選考に通りやすかったり、採用コストを抑えた分が年収に反映されるとったメリットが挙げられます。

一方で、業界について知見がある転職エージェントのサポートがないといった理由で情報収集面では不利です。前述した通り、特許事務所は相性が大事なので、よく知らない事務所に応募して内定したから飛び込むというのは非常に危険です。

直接応募するとしても、転職サイトやエージェントを併用したり、採用イベントや事務所見学などを通じてしっかり情報収集してから応募したいところです。

転職サイト・転職エージェント経由での応募

一般企業への転職活動のように転職サイトやエージェント経由で応募する方法です。

メリットとしては、情報が集約されており各事務所の比較検討がしやすく、応募フォーマットの統一などにより複数の事務所に応募する際の手間も省けるので効率的に転職活動を進められる点がメリットです。

さらに、エージェント経由で業界情報や選考情報の収集、職務経歴書の添削などのアドバイスを受けることもできます。

一方で、前述したように転職仲介企業への報酬が発生するので中小規模事務所としてはあまり嬉しくないのと、転職仲介企業への報酬の分、年収が低く抑えられてしまうリスクがある点がデメリットです。

特許事務所の場合、業界が特殊なので専門性の高い転職サイトがおすすめです。

特許事務所の転職に強くて登録しておくべき転職サイトとして、リーガルジョブボードとビズリーチが挙げられます。

因みに、私はアスタミューゼという会社経由で前職の特許事務所だけに応募して内定、入所しましたが、現在アスタミューゼは転職仲介サービスを行っていないようです。

特許事務所の選考対策

特許の選考事例として私のケースを紹介します。多くの事務所がこのような選考体系を採っているかと思います。

• 履歴書・職務経歴書による書類選考
• 一次面接
• 筆記試験
• 最終面接

筆記試験もあるのでハードルが高い印象ですが、適正がないのに偶然入ってしまうと後が地獄なので、選考回数が多くて筆記試験もあることはむしろ喜ぶべきです。

特許事務所や弁理士は向いている人というのがはっきりしているので、自分が特許事務所の業務に適性があるということを書類でも面接でも伝えることを意識しましょう。

書類選考対策

履歴書の志望理由の書き方

志望理由の書き方としては、以下のような流れで書くとよいと思います。応募先の特許事務所としてもこれらは聞いておきたいはずです。

• なぜ転職したいと考えたのか
• なぜ転職先として特許事務所（弁理士）を選んだのか
• なぜ応募先の特許事務所を選んだのか

以下に、私が応募した時の志望理由を再編集したものを記載します。ポイントとしては実体験をできるだけ記載して、事務所が求めているスキルを持っていることをさりげなくアピールすることを意識しています。

　私は現職のメーカーで大学との共同研究に携わっています。
　その経験を通して～の知識を身に着けた一方で、未体験の法律分野に対する知的好奇心と会社という枠を超えて地域の様々な企業や大学といったクライアントを補佐して社会との繋がりが実感できる働き方がしたいと考え、弁理士を目指して勉強しています。
　弁理士を目指すなか、現職において大学との共同発明を特許出願する際に貴所の弁理士にヒアリングから明細書の具現化までサポート頂いたことがきっかけで貴所を知り、興味を持ちました。貴所は～を特色としていることから、私は貴所でこれまでの経験で培った～を活かしながら特許技術者として経験を積み、将来は～な弁理士を目指したく、貴所を志望致します。

職務経歴書の書き方

職務経歴書ですが、最後に自己PRの項目があるので、特許事務所の業務と自分の職務経歴とそれによって得たスキルとを関連付けながら記載していきます。

職務経歴については事実を記載するのはもちろんですが、自己PRの裏付けとなるエピソードを意識的に盛り込むようするとよいです。

以下に、私が応募した時の志望理由を再編集したものを記載します。

【自己PR】
私はこれまで培った幅広い技術知識とアイデア、分析力を活かして明細書作成、調査業務に取り組み、弁理士を目指します。
・幅広い技術知識
私は高等専門学校で電気・電子工学を学び、現場実務を経て、大学で材料や流体など機械工学を学びました。現在は～について大学との共同研究業務に取り組んでいます。
以上の経験を電気から機械分野、輸送機器など幅広い分野の明細書作成や調査対応に役立てたいと考えています。

・アイデア力と分析力
現職では～や、～、～など様々な発明を行いました。さらに～の開発では性能計測や実験に基づいた装置の改良、研究成果の発表を通してアイデアを評価してまとめるプロセスも経験しています。
以上の経験をお客様のアイデアを一緒に深化、発展させ明細書等に効果的に表現することに役立てたいと考えています。

・継続学習力
私は働きながら勉強して大学受験した経験から、仕事と勉強を両立できる習慣があります。現在の会社に入社後も勉強を継続しており、一昨年は技術士一次試験にも合格し、現在は弁理士の勉強に取り組んでいます。そのため私は将来も技術の進歩に追随できるよう勉強を継続することができます。

一次面接対策

特許事務所の面接ですが、私の場合は一次面接で以下のようなことを聞かれました。

なお、面接担当者は所長や副所長といった経営者と受け入れ先の上司でした。

• 高専のカリキュラムについて（電気電子の専門知識について）
• 造船メーカーでの仕事内容
• 弁理士を目指した動機
• 現職で出願した発明について
• 得意とする技術分野
• 企業の知財部は考えなかったのか
• 特許事務所と企業知財の業務の違いを理解しているか
• 弁理士試験の勉強状況
• 譲れない条件はあるか（年収など）
• 逆質問

以上の質問内容から、以下のようなことを気にしている（確認したい）ことが見えてきますので、それに対してしっかり回答できるように準備しておきましょう。

• 技術理解力とその裏付けとなる経験は十分か
• 特許事務所の業務・環境に対してミスマッチが起こらないか
• 弁理士試験に合格できそうか
• 希望年収でミスマッチが起こらないか

特許事務所の立場で考えて、以下のような不安を持たれないように意識しましょう。

• 知財の知識は入所してから身に着けてもらえばいいのですが、技術理解力がないと先行き不安
• 年収や環境が合わないからとすぐ辞められると困る
• 特許出願等の代理が主な仕事なので、いつまでも弁理士になれないと困る

技術理解力とその裏付けとなる経験は十分か

書類選考を通過して面接に呼ばれている時点で、技術系の経験は十分かとは思いますが、現在の職務内容について深堀りして聞かれた際にしっかり回答できるように、キャリアの棚卸しや自己分析は十分に行っておくべきです。

特許事務所の業務・環境に対してミスマッチが起こらないか

特許技術者の業務内容については、理解して自分の口でしっかり説明できるようにしておくべきです。また、特許事務所特有の雰囲気（個人ワークで静かに黙々と作業する時間が長い）が平気であることも実体験を交えて説明できるようにしておきたいです。

弁理士試験に合格できそうか

弁理士試験の勉強状況についても聞かれる可能性が高いです。受験経験がある、資格講座を受講しているなど、弁理士試験合格に向けて既に行動しており、合格までの見通しを立てていることを説明できるようにしておくべきです。

希望年収でミスマッチが起こらないか

面接で希望年収は聞かれるかと思います。強気過ぎてもミスマッチが起こりやすくなりますし、逆に自分を安売りするのもよくはないので、少なくとも現職での年収を希望年収として、最終的には貴所提示の年収を受け入れる用意があるというスタンスで回答するとよいと思います。

筆記試験対策

普通の企業では筆記試験としてSPIを課されるケースが多いのですが、特許事務所の業務は独特なのでSPIの代わりに独自の筆記試験を課すケースが多いかと思います。

私の場合は以下のような試験内容でした。

• 発明の仮想事例が提示されて、それに対して特許請求の範囲を作成する試験
• 小論文（世界から「摩擦」がなくなったらどうなるか）

小論文については「物理の基礎知識を使って、文章として適切に表現する力」を問うているのだと思います。

また、求められる知財の知識レベルとしては、開発・設計部門などの技術者が有しておくべき特許に関する知識があれば十分かと思います。

テキストとしては、以下のテキストの内容をしっかり理解できていれば問題ないと思います。

小論文については対策が難しいですが、文章を書くことに自信がない方は以下の本を読んでおくのがおすすめです（弁理士必読の書と言われています）。

最終面接対策

技術理解力や特許事務所の業務への適性は一次面接で確認しているはずです。

そのため、最終面接は入所への意思確認と共に人物面で問題ないかの確認の場ということを意識して油断せずに臨みましょう。

特許事務所は指導者との師弟関係が重視される職人的な世界なので、一から謙虚に業務に取り組む素直さや、メーカーとは異なりサービス業ともいえる世界なのでクライアントと円滑にコミュニケーションが取れる能力が求められるので、真摯に臨むようにしましょう。

まとめ

以上のような選考を突破してめでたく内定できたとしても、特許事務所は入ってからが大変です。

私も内定したときは「弁理士に進むレールに乗ったので後は全力で走るだけ！」と喜んだのですが、そう簡単にはいきませんでした。

特許事務所に入ると日中は実務の習得に取り組み、夜間や休日は弁理士試験の勉強に取り組む生活が数年は続きます。苦労の末に弁理士試験に合格できたとしても、私のように事務所弁理士としては短命に終わってしまうケースもあります。

もちろん、それを乗り越えて一人前になればサラリーマンでは到達できない年収や自由な働き方を手に入れられるチャンスがあります。

特許事務所は入ってからが本番ということは肝に銘じておきましょう。