高専卒とはどんな学歴?高専卒で就職して感じた大卒との差と後悔したこと

エンジニアのキャリア

高専卒は高卒と大卒の中間的な立ち位置で、大卒や高卒と比べると少数派で、短大卒、専門卒でもありません。

そのため、企業における高専卒の扱いについて不安に感じている人も多いと思います。

高専生
高専生

先生が高専卒は大卒扱いと言っていましたが実際のところどうなんでしょうか?

キャリ造
キャリ造

高専卒を大卒扱いするか高卒扱いするかは企業によって異なります。ここでは、高専卒で就職した私の実体験を紹介していきます!

企業での高専卒の扱いは企業や採用区分によって異なります。

この記事では、好ましくない事例として、私が高専卒で大手メーカーに就職して感じた大卒との差と後悔したことについて紹介します。

この記事はこんな人におすすめ
  • 進路選択を控えた高専生
  • 高専生の保護者
  • 進路指導を担当している高専関係者

高専卒の学位と卒業時の年齢

高専を端的に言うと「技術者を養成する5年生」の学校で大学と同じ高等教育機関になります。

そして、高専を卒業すると「準学士」という学位が授与されます。

準学士は学位に準ずる称号なので厳密には学位ではありません。

高専は、極端に言えば「工業高校(3年)+工科短大(2年)」といったイメージなので、卒業時の年齢は20歳になります。

大卒の同期より2歳下、高卒の同期よりは2歳上で、入社時の年齢的には短大卒や専門卒と同じです。

高専卒と短大卒・専門卒との違い

高専卒と短大卒・専門卒との制度的な違いは前述した卒業時に受けられる学位や称号です。

下の表のような感じで区別されています。

学歴学位・称号区分
高専卒準学士称号
短大卒短期大学士学位
専門卒専門士称号

実態的な比較をすれば、短大や専門学校では2年しか専門教育を行わないのに対して、高専では5年一貫で専門教育を行うため、専門知識やものづくり経験の面で有利です。

高専からの就職先

高専は技術者を養成する学校なので就職先としてはメーカーやインフラ系(電力会社や鉄道会社等)の技術職が多いです。

注意しなければならないのは、同じ会社でも総合職とそれ以外で働き方や将来が大きく変わるので高専卒がどのポジションに位置づけられるのか調べるようにしましょう。

大卒と同等に扱ってくれる企業もあれば高卒扱いされる企業もあります。

  • 大手企業(総合職)
  • 大手企業(事業所採用、高専卒採用)
  • 地元中小企業
  • 専門職(航空整備士等)
  • 公務員(建築・土木系の学生が多い)
キャリ造
キャリ造

就職先の選び方については別の記事で詳しく教えます!

高専は就職に強い?学校推薦の光と闇

一般的に「高専は就職に強い」といわれていますが、喜ぶのは早計です。

企業がなぜ高専卒を欲しがるのか冷静に考えると、高専生は大学工学部並みの知識・経験を持ちながら、大卒ではないということで地位や年収を低く抑えて現場で使い続けることができることも理由の一つとして挙がってくるはずです。

そして、高専生が欲しい企業と就職率を高めたい高専の利害が一致して「学校推薦」という制度があります。

学校推薦は企業が学校ごとに推薦枠を割り当てて、学校推薦を受けた学生がそれに応募すると選考での優遇が受けられるというものです。

また、推薦枠は用意されていないが単に「内定出したら入社を確約する保証書」をつけて志望度の高さをアピールするために学校推薦で応募するパターンもあります。

よくある高専生の学校推薦での就職活動のパターンとしては、

  • 高専に来ている求人票の中から受けたい会社を選ぶ
  • 学校推薦を受けて応募する
  • 落ちたら残っている求人票の中から別の受けたい会社を選ぶ

を繰り返しながら一社ずつ受けるといったパターンが多いです。

学校推薦という制度は学生にとってメリットもある一方で下記のような歪みもあるので、私は学校推薦という制度に疑問を感じています。

  • 高専というブランドに求人を出しているので、「その高専の学生であれば正直誰でもいい」と考えている企業もある
  • 高専側も誰にでも推薦を出す(成績や素行が悪くてもお構いなし)
  • 学校推薦だろうと企業側は学生を自由に落とすことができる
  • それにも関わらず学生は内定がでたら入社しなければならない
  • 入社を断ると翌年からその学校の学生を採用しないといった報復がある
  • 学校推薦に縛られて高専に来ている求人以外に目が向きにくい

学生に言えることは、高専に来ている求人に縛られずに大学生のように就職サイトや企業の採用ホームページから積極的に自由応募して視野を広げるようにするとよいです。

高専卒で就職して実際に感じた高専卒の現実

高専から学校推薦で就職活動をして大手造船メーカーに内定

私は、高専での成績は中の下、大学で勉強したいという意欲もなくだらだらと高専生活を過ごしてしまいました。勉強への意欲も低く、安易に就職に流れてゆき、飛行機や船が好きだったため好きなことを仕事にできればいいと軽く考えていました。

高専での就職活動では当初、航空整備士を目指して大手航空会社系列の航空整備会社の選考を受けました。しかし、最終面接で落ちてしまい、航空整備会社への就職は叶いませんでした。

航空整備会社に落ちたときは、とても落ち込みました。

しかし、周囲が続々と進路を決める中、立ち止まっている暇はなく、まだ残っていた求人の中から大手造船メーカーを学校推薦で受けることにして少しづつ立ち直っていきました。そのメーカーは、造船大手の一角で、飛行機から船へ気持ちを切り替えて頑張ろうと再起して選考に臨みました。

その会社の選考はSPIと一回の面接で、選考ハードルは高くはありませんでした。

テストセンターでSPIを受けた後、面接を受けに地方の某県に行きました。恥ずかしながら人生で初めて新幹線に乗って某県に前日入りして駅周辺を散策、その夜は駅近くのホテルに泊まりました。

面接当日は駅からバスで一時間程かけて海辺の田舎町にある造船所に行きました。バスの窓から見えた造船所の景色に圧倒されたことを覚えています。

集合場所の歴史を感じる迎賓館に着いて採用担当の方と合流しました。最初に迎賓館の食堂で昼食をご馳走して頂き、カツカレーを緊張しながら食べました。

そして、いよいよ面接に臨みました。

総務部の管理職、後の所属長となる技術系の管理職の方をはじめ3人との面接でした。落ちてしまった航空整備会社での選考での面接経験を活かして無事に面接を終えることができました。

面接後は採用担当の方と工場見学をして、建造中の船の大きさと迫力に圧倒され、ここで働けるかもしれないという希望が膨らみました。

面接からしばらくして、先生から内々定が伝えられ、高専での就職活動が終わりました。

キャリ造
キャリ造

一回の面接で大手メーカーに内定でき、「さすが高専は社会から評価されてるなあ」と勘違いをして喜びました…。

このときは、大好きな船を造っている大手メーカーに内定したことを素直に喜び、この会社で活躍したいと希望に胸を膨らませました。

高専卒の扱いに一抹の不安を抱えながら卒業

就職が決まったこともあり、大好きな船の仕事ができると船マニアぶりも加速して有頂天になります。また、ネットで大学生の就職活動について調べ、大手企業に入りやすい高専生の就職活動と比較して優越感に浸るなど自分にとって都合のいい情報に囲まれて周りが完全に見えなくなっていきました。

キャリ造
キャリ造

「学校推薦で大手に簡単に入れる高専卒は最高!」と勘違いもますます加速します…。

一方で、ネットには高専卒では一定以上の役職に就くことが難しいことや、大学卒より昇進スピードが遅いことなど私にとって不都合な情報もありましたが目をつぶりました。

また、同級生の中には成績最下層にも関わらず大学編入試験を頑張って国立大学2つに合格した人もいて、私も「大学編入を目指して頑張っておけばよかった」後悔する気持ちも芽生えてきました。

しかし、もうどうすることもできないので、大学卒に負けないように頑張るしかないと自分に言い聞かせます。

キャリ造
キャリ造

「社会に出れば学歴なんて関係ない」と自分に言い聞かせました。

その後は、卒業するために卒業研究をそこそこに頑張り、なんとか卒業に漕ぎつけました。クラスでも存在感がない私は仲の良かった友達ともあっさりと別れ、以降疎遠になって今に至るまで誰とも会っていません。

キャリ造
キャリ造

同窓会にすら呼ばれないレベルでぱっとしなかったので私は行方不明扱いになっていると思います…。

こうして、あまりぱっとしなかった私の高専生活はあっけなく終わりました。

初めての一人暮らし

高専卒業から短い春休みを過ごし、あっという間に会社の寮に入寮する前日となりました。このときまでずっと実家で家族と暮らしてきたため、私にとって初めての一人暮らしが始まります。

在来線、特急、新幹線、バスを乗り継ぎ4時間以上かけて再び造船所がある海沿いの田舎町にやってきました。その日はホテルで一泊し、入寮日当日は、午前は町を散策し、午後は寮に集合して説明を受けた後、事前に送った荷物を荷ほどきしたりしました。

寮は、とても古く、風呂、トイレ共同でお世辞にも綺麗とは言えませんが、部屋は元々二人部屋なのを一人用として使うのでそこそこ広かったことを覚えています。

大学・大学院卒と別々の入社式で格差を突き付けられる

入社式当日の朝、寮の玄関に集合して人事の人が点呼を始めました。ところがいつまで経っても私の名前は呼ばれず点呼が終了してしまいました。

人事の人に聞いてみると「高校からの方ですか?」と言われ、高専から来たと答えると、もう一人の高専卒と思われる人と列の先頭に並ぶことになりました。

人事の人に案内され迎賓館がある工場の正門付近に来ると先頭の私たち二人だけ、そのまま、目の前にある現場のプレハブに向かって進むように言われて、人事の人と大学卒の人達は迎賓館の方に行ってしまいました。

言われた方向に進むと面接の時に案内してくれた人が迎えてくださり、プレハブの最上階に案内してもらいました。そこが私たち高専高卒新入社員の入社式の会場でした。

大学卒本社採用の人達は迎賓館で社長達の出席する盛大な入社式が行われ、高専高卒事業所採用は、プレハブで事業所の幹部が出席する小規模な入社式で、入社式早々大学卒との格差を思い知らされました。

学位として意味をなさない準学士

中学の時はそれなりに勉強ができて高専に入って大学卒に劣らない専門知識を身に着けたはずなのに社会に出てみると高専・高卒という括りで大学・大学院卒のより下の階層に位置づけられる現実にショックを受けて、入社式を迎えて晴れやかな気持ちは全くありませんでした。

最初に説明した通り、高専を卒業すると準学士の称号が与えられますが名誉的なもので社会において全く意味をなさないことを痛感しました。

キャリ造
キャリ造

高専を卒業した意味ってなんだろうと呆然としました…。

大学編入してたった2年大学に行くか行かないかだけでこんなにも住む世界が変わるのかと思うと後悔の気持ちでいっぱいになりました。

 入社式を終えると、写真撮影やその他の説明など一連の手続きを済ませ、入社初日が終わりました。

大学・大学院卒と分かれた研修・教育体系

入社式の翌日から、新入社員研修が始まりました。

新入社員研修も学歴と採用区分によって完全に分けられており、大学大学院卒、高専高卒事務技術職、高卒技能職で別々の研修になります。当然、私は高専高卒事務技術職の研修でした。

初めは、自分の置かれた区分に不満を抱いて周りと少し心の距離を置いていましたが、自分の置かれた状況を跳ね返そうと研修は真剣に受け、変り者の私でしたが高卒の同期達とも仲良くなることができました。

そして自分の置かれた状況を少しづつ受け入れるようになりました。

キャリ造
キャリ造

現実を受け入れで頑張ろうと前を向きます!

高専卒の配属先とその仕事・業務内容

そして、新入社員研修が終わり配属となりました。面接してくれた所属長が迎えに来てくれ、私が働く事務所へ案内されました。

私の配属された部署は船の生産計画を行う部署で少し歩けば直ぐに現場という場所に事務所がありました。メンバーは約15人程で私は艤装のチームに所属となりました。

一日の流れは、朝は安全具フル装備でラジオ体操、ミーティングをしてそのまま現場をパトロール、その後は事務所で工事の予定や施工方法を考えて資料を作ったり、適宜現場や設計部署に行って作業の確認や関係者との調整を行ったりといった流れとなります。

 初めは設計部署に行って船についての研修を受けたり、同じ部署の方から船の建造について現場や座学で学びました。

私はいわゆる「船マニア」だったので最初は業務と関係のない船についてのマニアックなことを質問したり話したりしていましたが、課長や教育担当にたしなめられ、「オタクの知識はプロの世界では通用しないこと」「プロの世界でオタクは嫌われる」ということを学び、そのような質問や発言は慎むようになりました。

そして、配属から数か月は設計や現場を色々巡って研修を受けて船の設計や建造について学んでいきました。

私の部署では高卒社員と大卒社員とが混在しており、配属から数年間の仕事内容で高専・高卒社員と大学・大学院卒社員の違いというものはありませんでした。

高専卒と大学卒とのキャリアの違いを実感して悩む

配属後、研修を受けたり、現場実習をしたりしながら6月となりました。

初めての社会人生活に一定の充実感も感じていましたが、周りの様子を見たり話を聞くと私は高専卒事業所採用であるため、大卒本社採用とキャリアコースが異なり、ジョブローテーションはなく基本的にはずっと同じ部署で同じ仕事を続けていくことになることがわかりました。

また、課長以上の役職に就くことも困難であることもわかりました。そのため、このままでいいのか、何か行動しなければと真剣に悩むようになりました。

公務員への転職を考える

休日は同期と遊んだりせずに一人で書店を巡ったりして一人の時間を過ごすことがほとんどでした。

高専時代は勉強が得意でも好きでもなかったにも関わらず働き始めて書店に行き、公務員や大学受験の参考書を眺めると「学生時代にもっと自分から勉強しておけばよかったな」と考えることも多くなりました。

そんな中興味を持ったのが公務員試験で、受験資格に学歴は関係なく大卒レベルの公務員試験に合格して転職すれば大卒並みの評価を得られるのではないかと考えました。

そして、艦船が好きだった私は公務員試験の中でも海上自衛隊幹部候補生という試験に挑戦しようと思いました。この試験に合格して公務員になれば将来が大きく変えられるという期待が大きくなっていきました。

早速、過去問集や試験に出る科目(社会や地理、化学など)の参考書を購入して毎日夜遅くまで勉強するようになりました。

高専時代テスト前にならなければ自発的に勉強しなかった私が本気で将来を変えるために勉強に打ち込むようになっていきました。

そして、高専時代授業についていけなかった物理や数学を改めて勉強して理解してみてると勉強が面白いと思うようになりました。

大学編入を目指すことを決意

自衛隊一般幹部候補生を目指して勉強を始めて8月も終わりに差し掛かりました。

高専時代に定期テストを凌ぐためだけに嫌々勉強していてすっかり内容を忘れていた微分積分や線形代数などももう一度基礎から勉強し直すと、勉強することが楽しいと思えるようになりました。そしてだんだんと次のような思いが芽生えてきました。

  • もともと大学を出ていないことがコンプレックスだったので大学編入を目指してもいいのではないか
  • 大学で勉強することが本来やりたいことなのではないか
  • 公務員試験は大学を出てからでも遅くはないのでは
  • 今から大学を目指すと2浪相当になるがそのくらいの遅れは問題ないのではないか

そんな考えが芽生えて大学編入に目標を切り替えることにしました。

目指したい大学はもう心の中に決まっていて、配属されて間もなく造船技術者初級研修で講義してくれた先生が在籍する大学で船舶工学が勉強できる某国立大学でした。

そこから高専卒社会人による大学編入への挑戦が始まります。

まとめ

私は、高専卒で就職して様々な現実に直面して将来を変えるために必死でもがきました。結果的に社会人から大学編入することで将来を変えることができました。

高専卒で就職してミスマッチを感じて早期退職することは本人にとっても採用した会社にとっても不幸なことです。

私のようにならないためにも高専からの進路選択は十分に情報収集して慎重に行ってください。

キャリ造
キャリ造

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この記事を書いた人
キャリ造

社会人の転職や大学進学、資格取得に役立つ情報を発信しています!
高専卒社会人から大学編入して船舶工学を学び日本船舶海洋工学会奨学褒賞を受賞しました。造船・重機メーカー3社、特許事務所を経験し弁理士試験に合格、現在は知的財産の仕事をしています。それらの経験から高専卒業生や知財業界志望者から相談を受けることもあり、エンジニアのキャリアに関する情報発信を始めました。

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