近年、事業撤退や協業といった再編が目まぐるしく進んでいるのが造船業界です。さらに最近では政府が造船業界への支援に動き出すなど新たな動きもみられます。そんな変化の激しい造船業界への就職を考えている就活生や転職希望者としては生き残れる会社はどこかといったように会社選びに悩んでいる方も多いかと思います。

造船業界に興味があるのですが、会社をどのように選べばいいでしょうか?

造船業界にいた私が自分の目と耳で直接体験した各社の特徴を解説します!
この記事では、私が造船メーカーで働いたり船舶工学を学ぶ学生として様々な造船メーカーのインターンや工場見学で直接見たり聞いたりした経験を基に造船メーカー6社について解説していきます!
- 造船業界への就職・転職希望者
- 造船業界について知りたい人
注目の造船メーカー6社
今回は造船業界の中で大きな変化を迎えていたり、造船業界を語る上で外せない6社をピックアップしました。
- 今治造船
- ジャパンマリンユナイテッド
- 三菱造船
- 新来島どっく
- 内海造船
- 常石造船
今治造船
1社目は新造船の建造量において日本一を誇る国内最大手の今治造船です。名実ともに国内造船の盟主として君臨しています。

通称、今造(いまぞう)呼ばれています!
その名の通り愛媛県今治市に本社を置き、瀬戸内地方を中心に多くの工場やグループ会社を有しています。その規模の大きさを活かして効率化を図り大量建造を実現している点が特色です。
出典:今治造船株式会社 -IMABARI SHIPBUILDING CO.,LTD-
私は、大学3年次に香川県の丸亀事業本部にて2週間インターンシップに参加して、その規模を大きさと働き方を自分の目と耳で体験してきました。
- コンテナ船
- ばら積み船
- 自動車運搬船
建造実績としては、艦艇や保安庁船を除く様々な種類の船を建造しています。近年では丸亀事業本部や西条工場、広島工場にある巨大なドックやゴライアスクレーンといった工場設備を活かして全長400mを超えるメガコンテナ船を多く建造しています。
したがって、様々な種類の船に携われるチャンスがあります。また、丸亀事業本部に巨大な試験水槽を設置したり後述のジャパンマリンユナイテッドと協業するなど研究開発力も高めているので高い技術に触れることもできます。
ジャパンマリンユナイテッドとは、共同で日本シップヤードという会社を設立して協業関係にあり、設計や営業を一元化しています。
2025年6月26日に今治造船がJMUへの出資比率を60%に引き上げ、子会社化するとの発表がありました。
建造量日本一なだけあって工場の広さやドックやクレーンを始めとする工場設備など全てにおいて他社を圧倒しています。

今造の巨大なゴライアスクレーンは工場がある町のシンボルになっています!
なお、現場の作業員については本工(正社員)が中心の総合重工系とは異なり協力会社が大多数を占めており、朝になると様々な作業着と国籍の大勢の人達が自転車で工場内に入っていきます。
勤務地については、設計開発職の場合、香川県の丸亀事業本部になりますが、職種によってその他の工場で勤務する場合もあります。いずれにしても瀬戸内地方を拠点に働くことになります。
- 丸亀市(香川県)(設計開発職)
- 今治市(愛媛県)(本社)
- 西条市(愛媛県)
- 三原市(広島県)
留意点としては、一族経営のオーナー企業であるため、それゆえのメリットとデメリットは受け入れる必要があります。
私が新卒者向けの選考を受けて感じたとして選考の特徴としては、最終選考が実質的な本番という印象で、大量の学生を傘下の今治国際ホテルに集めて筆記試験と役員面接で選考して内定者を絞り込むいう点が特徴です。
ジャパンマリンユナイテッド
新造船の建造量において日本第2位の造船メーカーです。
いずも型護衛艦や、まや型艦を建造したことでも有名な会社で通称JMUと呼ばれています。
総合重工系の造船部門が合併を繰り返してできた会社で、日立・JFE系のユニバーサル造船とIHI・住友系のIHIマリンユナイテッドが合併して誕生しました。
今治造船の説明で述べた通り、今治造船の子会社となる予定です。一昔前は就活生からみるとオーナー系専業の今治造船より総合重工系のJMUの方が格上で人気があったのですが、今ではJMUよりも親会社の今治造船に入る方がよいといった状況です。

現在、護衛艦を建造できるのはJMUと三菱重工だけです!

私は、呉工場の工場見学や企業説明会、懇親会に参加して、自由応募で選考も受けました。
- コンテナ船
- ばら積み船
- 艦艇・官公庁船
- 大型フェリー
今治造船とは対照的に総合重工系の流れを汲むため、艦艇や官公庁船の建造実績が豊富です。
総合重工系だけあって高い研究開発力と技術力を有しており、艦艇や特殊船に携われるチャンスがあります。
さらに、ブランド力が高いので造船学科の就活生にも人気でした。
勤務地については、東は横浜、西は熊本と全国各地に拠点があり、配属ガチャで思わぬ土地で働いたり転勤族になることを覚悟しなければなりません。

もちろん横浜勤務が一番人気です!
- 横浜市(本社、磯子、鶴見)
- 津市(三重県)
- 舞鶴市(京都府)(艦艇修繕)
- 呉市(広島県)
- 有明市(熊本県)
説明会や懇親会で話を聞いた印象では、ユニバーサル造船出身者とIHIマリンユナイテッド出身者とが合わさってできたまだ若い会社なので、社内に壁があったり社内制度がまだまだ整備中という印象でした。
私が自由応募で新卒者向けの選考を受けて感じた注意点としては、学校推薦から優先して選考を進め、枠が埋まるとそれまでの面接の合否に関わらずいきなり選考を打ち切られたので要注意です。
三菱造船
総合重工最大手の三菱重工の造船子会社です。他の総合重工系の造船が次々と再編の波間に消えていく中、唯一無二の地位を確立して生き残っています。
特に大型フェリーの建造実績は群を抜いており、保安庁船や特殊船も建造するなど高い技術力が特徴です。

大型フェリーのほとんどは三菱造船で建造されてます!
また近年では、船の設計技術や設計支援ソフトを他の造船所に供与するエンジニアリング事業にも力を入れています。

- 大型フェリー
- RORO船
- 保安庁船・特殊船
客として乗ることができるフェリーの建造に携われる点と三菱重工というブランド力もあるので就活生に人気がありますが、規模としては大きくないため、採用数が少なく難易度は非常に高いです。
私も2週間下関でインターンシップに参加した上で万全の準備をして選考を受けましたが落ちてしまいました。余談ですが、下関の社員寮は造船メーカーとしては綺麗な方で、休日は福岡に出かける人が多い印象です。
主な勤務地は九州が中心のため、配属ガチャのリスクが低く九州大学を始めとする九州の学生の人気が非常に高いです。
- 下関(山口県)
- 長崎
因みに三菱重工グループでは、護衛艦といった艦艇は三菱重工本体で建造し、艦艇や特殊船の一部は三菱重工マリタイムシステムズ(旧三井造船玉野)でも建造しています。
三菱重工の場合、配属を確約する形で部門毎に選考を行う点が特徴なので配属ガチャのリスクは低くなっています。
新来島どっく
今治造船と並んで海事都市今治で有名な造船メーカーです。
単独では生き残れなくなった各企業を傘下に収めて規模を拡大し、淘汰の中にある造船業界の中でも生き残ってきた存在感のある会社です。
出典:株式会社 新来島どっく|造船の未来を拓く
自動車運搬船に強みがありますが、プロダクトミックスを掲げており、ケミカルタンカー等の多様な船種を建造していますので、様々な船種に携わることができます。
私の印象としては、共同研究先の広島大学との繋がりが強く、広島大学から就職する人が多い印象です。

毎年11月頃に開催される工場祭で自動車運搬船をがっつり見学させてくれたり、バリシップでもノベルティグッズを沢山くれるなどサービス精神旺盛な印象です!
- 自動車運搬船
- ケミカルタンカー
- ばら積み船
主な勤務地については拠点である今治になります。
- 今治市(愛媛県)
内海造船
しまなみ海道沿いにある生口島を拠点としている造船メーカーです。知名度は低いですが、近年、大型フェリーや防衛省向け艦艇への参入で話題となっています。

会社としての規模は小さいですが、特に中小型フェリーの建造実績が豊富です。
さらに、因島の造船所を傘下に収めたことで三菱造船が得意とする大型フェリーにも参入して造船業界の中でも異色の存在感を放っています。
最近では防衛省向けの輸送船も建造するなど、建造できる船の種類は造船業界の中でもトップクラスです。

自動車メーカーで例えるならスバルのようなポジションです!
私の印象としては、会社説明や工場見学、選考などで親切に対応してくれたため、とても良い印象を持っています。社員寮も新しくてきれいな方です。
- フェリー
- RORO船
- 自動車運搬船
- 特殊船
勤務地はしまなみ海道沿いの島である生口島の瀬戸田町になりますが、レモンが有名な観光地であることと、しまなみ海道を通じて広島(特に尾道)へのアクセスが容易であり、しまなみ海道自体が魅力的な場所でもあるので住む場所としては決して悪くはないと思います。
- 瀬戸田(広島県生口島)
- 因島(広島県)
常石造船
広島県福山市を拠点にしている造船メーカーです。
かつては中堅メーカーでしたが、現在ではかつて大手だった三井造船(現三井E&S)の商船部門を傘下に収め、造船大手の一角として存在感を放っています。
常石造船の子会社の一部には三井の名前が残っていましたが、社名を変更して三井の名前は消滅しました。
出典:常石造船株式会社|TSUNEISHI SHIPBUILDING Co.,Ltd.
海外建造に力を入れている点が特徴で、フィリピンや中国に工場を有していますので海外志向の方にもおすすめです。

海外に軸足を置く造船メーカーとして有名です!
こちらも新来島どっくと同じく共同研究先の広島大学との繋がりが強く、広島大学から就職する人が多い印象です。
こちらも今治造船と同じく一族経営のオーナー企業となります。
まとめ
一口に造船会社といっても担当できる船種や働き方や勤務地などそれぞれ個性があります。
普段聞き慣れない会社も多いと思いますが、いずれの会社もれっきとした大企業で造船業界の再編を生き残ってきた企業です。
正直なところ、都会のきれいなオフィスとは真逆に位置する労働環境で、不況のイメージが強く若い人に敬遠されがちなので、労働環境や賃金の改善などで若い人にとっての魅力を高める必要があると思います。
携わりたい船や技術でしたり、勤務地や会社の個性を総合的に考えて自分に合った会社を選んでいただければと思います。
造船業界についてもっと知るために
造船業界に興味があって船や造船について知りたい方は以下の本を読んでみるとよいと思います。一般の人でも楽しく読める内容ですし、造船業界で就職活動する上での基本的な知識を身に着けることができます。
以下の本は造船会社での研修でも使われる名著です。その名の通り引合から解船まで造船所での仕事の全体像を知ることができます。一般向けの本よりも一歩踏み込んだ内容を知りたい方におすすめです。







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